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「分かりました」
細く、長い腕が目の前に差し出される。その肌は透き通るように白かった。
「では私の腕を掴んで下さい。お連れしましょう、今日の朝まで」
この男、本当におかしいんじゃないのか?辺りを見回すが、他には誰もいない。電車も、永遠に暗闇の中を走っていた。
「あなたの願いを叶えます。その代わり――」
次の言葉を待つことなく、俺は腕を、掴んだ。
男の顔に初めて微かな驚きの表情が浮かぶ。だが、すぐに元へと戻り、
「契約、成立です」
と一言、呟いた。
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