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電車に揺られ、どのくらい時間が経ったのだろうか。
気付けば車内からは人が消え、外の風景も真っ暗で見えない。
次の駅で降りよう――
誰もいない座席へと倒れるようにして座り込むと、今まで漠然と感じていた絶望感が実感を伴って襲って来る。
妻にはなんと説明すればいいのか。謹慎中の生活は?子供に訳を聞かれたら?
――だめだ。想像するだけで震えが起こる。思えば、ここまで特に大きな問題もなく、順調に生きてきた。それが、今日、そう――全てはあの―――
「何かお悩みですか?」
誰もいなかったはずの車内。少しの気配も感じさせず、俺の目の前に立っていた男。
俺は、目を見開いた。
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