序章 偶然か否か

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  ――八月。 日本という、四季のある国の中で、最も暑いとされる時期。熱中症で何人もブッ倒れる人が出る。 最近はやれ温暖化だ、二酸化炭素だとすっかり気温が高くなった。街もコンクリで固められて、尋常でない暑さに見舞われる。 その、真夏のお昼時に、ビルとビルの間を走り抜ける。 それはどれほど酷な事だろうか。その苦痛を、あなたは御存じだろうか。 …まどろっこしいことを長々と、何が言いたいのかというと。 つまるところの、今のこの状況は。 拷問ではないのか、と。 ただ、それだけ。 それだけなのだ、が。 日本特有の湿度の高い空気に。 付き纏う熱風に。 太陽の光をしっかりと受け止め、走ることは、かなりの労力を要する。 くだらないことでも言ってなければ、どうにかなりそうなくらいに疲労は溜まる。 まあくだらないことを言って現実逃避しても、所詮ただの戯言。現状が変わることはない。俺がビルとビルの間を走っているのも、炎天下の中にいるのも、変わることはない。 …だがしかし、このままだと本当に熱中症になりかねない。なに、目的地へ着くのが早ければこの苦痛からの解放は早いというのは、まあ歴然であるのだから迷う必要などない。 ゆっくり回転していた足に力を込めて、目的地へと駆けるスピードを大幅に上げた。 脇目も振らず目指すは、冷房のきいたコンビニ!!  
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