ユートピア

4/7
前へ
/21ページ
次へ
そして世界がはじまった。 深く深く沈んでいく感覚。 やがて微粒子の砂の底にたどり着く。 真上からは水に遮られゆらゆらと揺らめく太陽がみえ、口の端から零れ落ちる気泡がゆらゆらと遥か上方へと昇ってゆく。 息苦しさも圧力も感じる事はない。 腕で漕ぐと体は浮き上がりゆっくりと移動を開始する。 これもまた天国と言えるのだろうか。 霧の掛かる額に手をあてしばし考察する。 海は緩やかな流れでゆったりと移動している。 珊瑚が茂り、熱帯魚が其処此処を遊泳する。 澄んだ水は遥か遠く、しかし海の終わりを見せてはくれない。 その視界の奥、キレのある動きでイルカがやって来る。 イルカは海藻や海ブドウを加え、非常識な速度で近くと、一転、緩やかに僕の周りを見せつけるように泳ぐ。 やがてくわえていたそれらを押し付けてくる。 受け取るとイルカはまた見せつけるように泳いで、弾丸のように去っていった。 生で渡されてもな。 海ブドウを口に含み、渡された海藻の身の振りを考える。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加