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そして世界がはじまった。
深く深く沈んでいく感覚。
やがて微粒子の砂の底にたどり着く。
真上からは水に遮られゆらゆらと揺らめく太陽がみえ、口の端から零れ落ちる気泡がゆらゆらと遥か上方へと昇ってゆく。
息苦しさも圧力も感じる事はない。
腕で漕ぐと体は浮き上がりゆっくりと移動を開始する。
これもまた天国と言えるのだろうか。
霧の掛かる額に手をあてしばし考察する。
海は緩やかな流れでゆったりと移動している。
珊瑚が茂り、熱帯魚が其処此処を遊泳する。
澄んだ水は遥か遠く、しかし海の終わりを見せてはくれない。
その視界の奥、キレのある動きでイルカがやって来る。
イルカは海藻や海ブドウを加え、非常識な速度で近くと、一転、緩やかに僕の周りを見せつけるように泳ぐ。
やがてくわえていたそれらを押し付けてくる。
受け取るとイルカはまた見せつけるように泳いで、弾丸のように去っていった。
生で渡されてもな。
海ブドウを口に含み、渡された海藻の身の振りを考える。
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