戦が終われば雨が降る

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『紅蓮の鬼』 『日本一の兵』 ー―なんて、いくら強いと豪語されても所詮はこの程度なのだな。 二本の十文字槍を持った、赤い衣服を纏う彼、真田幸村は頭の片隅でそんな事を考え、嘲笑った。 将来的に、大阪・夏の陣と呼ばれる戦場で今、幸村は命の灯火を消そうとしている。 周りは見渡す限り、敵。 万全の状態の幸村なら、難なく突破出来るであろうが、生憎、利き腕の方に深手を負っていた。 故に冒頭のような事を考えていたのだ。 「俺も此処まで、か…。」 そう、小さな声で呟き、手に入れていた力を抜く。 心に残るは忍らしからぬ、飄々とした態度のあの彼。 敵が武器に力を入れ、警戒し始めるのを余所に、憎い程真っ青な天を仰いだ。 ー―これがあの彼の髪と同じ、夕焼けなら良かったのに そう思い、目を閉じようとした矢先、視界の端に、黒。 それは、一瞬の事だった。 真っ青な空に黒が混じったかと思えば、悲鳴をあげる隙すら与えず敵がなぎ倒される。 「旦那っ!!」 焦ったように叫ぶのは…、 たった今、自分が思いを馳せていた忍、猿飛佐助。 どれほどの敵を斬ったのだろうか。 綺麗な橙の髪は赤くなり、緑を基調とした服はもう黒い。 「佐助…。」 珍しく、本気で怒った顔の相手の名前を小さく口に出す。
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