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二人が居なくって一息吐いた。
……もう危険は無さそうね。
あたしは胸元を眺めて深々と溜め息を吐く。
服……穴が空いてるわ。
しかも胸の真ん中に大きく。
あたしの体はお父様譲りの魔法耐性で少しヒリヒリする位だけど、服はそうも行かなかったみたい。
羽織った上着はボタンが飛んだだけね。でも内側のシャツはもう着られそうに無いわ。
あたしはとりあえず上着を前後ろ逆に着るという変な格好で広場まで戻るはめになってしまった。
戻る途中でソワソワしていた最後の一人の首根っこを掴まえて広場に到着、花畑の真ん中でお昼寝モードに突入していたライナをさらに捕獲した。石で囲んだ牢屋という名のエリアに連行すると、一応予想はしていたけどみんな寝ている。
ほほう?
あたしが死ぬか生きるかの戦いをしている間お昼寝とは良い度胸してるじゃない?
「午前の部終了! そして午後の部にはあたし来ません!」
子供達を(蹴り)起こし終了宣言を行う。さすがにこんな変な格好のままで遊びを続行することはできないわ。
小さな子達は口々に文句を言っていたが、タリオを始めとする男の子達はあたしの異変に気付いたようだった。
さすが男の子だけあって、ただ森の中を歩いただけではなりえない服の荒れ方に気付いたみたいね……。
特にタリオは、親からあたしを守るようこっそり言いつかっているはず。以前あたしが小さな怪我をした時に、母親のモーラがタリオを叱っているのを見てしまったもの。
険しい表情をしている。
解散を宣言された子供達は散り始めた。その間を縫って来たタリオが話し掛けて来る。
「……お嬢様。その格好はどうされたのですか?」
言葉づかいがさっきと違う。
遊びの時間が終わり、主従関係に戻るというタリオなりの切り替えらしいわ。
変なこだわり。
「ん。大した事無……くもないわね……。でももう危険は無いわ。帰りながら話すから付いてらっしゃい」
あまり心配させるのも可哀想だから、なるべく気楽そうに言う。
でもタリオの表情は険しいままだったから、あまり効果が有ったとは言えなかったかも知れないわね。
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