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屋敷に帰り着いた。
途中でタリオに事の顛末を話したけど、あたしの話を聞いた彼は考え込んでしまった。
思い詰めなければ良いんだけれど……。
裏門から入り、勝手口の扉を開ける。正面玄関はお客様用の飾りみたいな物だからこれが普通なのよ?
扉を開けたらいつもの様にセバスチャンが笑顔で出迎えてくれた。
さっき蹴り倒された事は全く気にしていないみたい。
これは主従関係がどうのという話じゃなくて単に彼の性格がそういう事を気にしないだけだと思うわ。
だってあたしをこんな風に教育したのが彼自身だもの。間違いないわね。
出迎えたセバスチャンは、器用に片方の眉を上げてあたしの格好を見とがめる。
「おやお嬢様。その服は一体どうされたのですか?」
あ。やっぱり気付くわね。
あたしは何だか悪戯をした後みたいな気分になり、照れ笑いしながら答える。
「えへへ……お義母様に魔法で攻撃されて穴が開いちゃった……」
あたしの言葉にセバスチャンは目を見開く。そしてそのまま真っ白に染まっている頭を少し掻き、同じく真っ白の口髭を二、三度引っ張った。
「……とりあえず着替えを用意致します。自室でお待ち下され」
あら? 事情は聞かないのかしら? セバスチャンにとっては予想の範囲内だったとか? 頭の回転は速い人だから有り得るわね……。
確かに事情説明より着替えが先というのもわかる。第一あたしがそうしたいもの。
あたしは二階にある自分の部屋に向かう事にした。
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