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あたしは疑問はすぐに訊くことにしている。今回も迷わず訊いてみた。
「……実は気付いておりました。何しろ旦那様に布陣や侵攻目標等をしつこく訊ねておりましたからな」
うわ。あの人スパイとしては三流も良い所じゃない。怪し過ぎて逆に『もしかしてただの戦争オタクかな』って思っちゃうくらい怪しいわ。
「それでお父様は教えてたの?」
セバスチャンは頷く。
「はい。ですが旦那様にとっては余り関係無かった様でございますな」
確かに負けた噂を聞かないわね。……お父様恐るべし。
うーん。
何だかあたしが邪魔するまでも無く計画は失敗していたような気もして来たわ。
これって呪われ損じゃない?
「それでお嬢様。これからどうされるおつもりですかな?」
頭を抱えたあたしにセバスチャンは問い掛ける。その目はいつに無く真剣で、ちょっとだけあたしを怯ませた。
「と、当然お義母様を追いかけてこの意味わかんない呪いを解かせるわ。だってこのままじゃお嫁に行けないもの!」
あたしの言葉に、セバスチャンは少し驚いた顔をする。
「おや。お嫁に行く気があったのですか」
このジジイ人を何だと思っていやがる。
「……失礼ね。あたしも女の子なんだから結婚願望くらいあるわ」
「いえてっきり諦めているものだとばかり」
だからあたしの扱いがぞんざいなんだなコノヤロウ。
この失礼な執事の処遇は後から決めるとして、お義母様の居場所、つまりは目的地を確定させないと。
無目的に歩き回るわけには行かないわ。
「では私は旅の支度をして参ります。お嬢様の事ですから明日にでも早速発たれるのでしょう?」
「えぇ!? ど、どこに行けば良いのかも掴めてないのに!?」
椅子から立ち上がったセバスチャンのセリフを聞き、あたしは凄く慌てる。
確かに明日にでも出発したいけど、一体どこに行けと言うのかしら。
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