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セバスチャンは怪訝そうな顔であたしを見つめ、ふと何かを思い出したように手を合わせた。
「……おお! そういえばお嬢様は奥様の実家に行かれた事が有りませんでしたな!」
……実家? 何それ?
お義母様はお父様がある日突然連れて来たじゃないのよ?
あたしが記憶を頼りにセバスチャンに訊ねると、彼は何だか勝ち誇ったような顔で両手を振る。
「いえいえ、奥様にも実家はございます。旦那様が挨拶に伺った折に私も同行させて頂きました。お嬢様が向かわれるべきはそこで間違いありますまい」
へえ。あの人実家あったんだ。
ん? その実家ってまさか……。
眉を寄せたあたしに気付き、セバスチャンは嬉しそうに頷く。
「はい。奥様の実家は戦争中の敵国領内にございます」
うわやっぱり! そんな人と再婚したお父様の気が知れないわ。
そしてこの執事の笑顔が何だかすごくムカつく。絶対この状況を楽しんでるに違いないわ。
でもせっかく直した眼鏡をまた曲げるのも可哀想だから今回は見逃してあげよう。
「やはり日頃の行いが大事ですな……フォッホッホ!」
――結局眼鏡は曲がった。
あと何回で折れるかしら?
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