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朝食の後、そのまま食卓を使って作戦会議が開かれる。
卓に広げられた地図を覗き込むあたしとセバスチャンと他数名の使用人達。
「えっ? 何人で行くの?」
問うあたしに、セバスチャンは不思議そうな顔をした。
「いえ。敵国内でございますし、少人数の方が良いでしょう。私とお嬢様のみでございます」
あ、そうなんだ。
どうやら周りの彼女らは野次馬の様である。
「ルートはこうですな。隠密行動をとると発見された時の言い訳に困りますゆえ普通に街道を行きます」
へえ。なら乗り物が使える分結構楽な旅なのね。
「身分は商家の者という事に致します。下手な演技はすぐにボロが出ますからな」
一同ほうほうと頷く。
中々良く考えてあるじゃないの。
「携行致します武器は、私は剣が得意でございますゆえそれを。お嬢様には……特別に御用意致しました」
へ? たった一晩で?
目を見開くあたし達を満足そうに見回し、彼は両手を二度打ち鳴らした。
何も起きない。
セバスチャンは少し悲しそうな表情で扉の外へと消えて行き、何かを二つ持って帰って来た。
どうやら打ち合わせが上手く行かなかったみたいね。
「さあ、これでございます!」
そう言って卓の上に置かれたのは一組のトンファー。長い棒の途中に握りが突き出た棍棒の一種ね。
腕に沿う様に構えて盾のように使いながら、棒の先端部で殴りつけるのが普通の使い方。棒の長い方を前に向けて普通に殴って使うのも良いけど、攻守のバランスを考えると前者が使いやすい。
確かに自作のトンファーでよく暴れてるから使えるけど、これいつ作ったのかしら?
あたしの視線を受け、セバスチャンはなぜか得意気に解説を始める。
「フォッホッホ! こんなこともあろうかと、暇潰しに丹精込めて作っておりました。その名も『ガラスの靴』でございます!」
要は暇潰しに作っていたと。
あたしはその一対の『ガラスの靴』を手に取る。男の姿で少し軽いくらいだから女の姿なら丁度良いかも知れない。
材質は良く分からないけど、銀色の金属で出来ていて、ハイヒールの彫刻が握りの付け根に描かれていた。
なるほど。
対になっているのね。これなら使いこなせるわ。
あたしはそれを握り締め、覗き込む執事に笑顔を向けた。
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