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屋敷の裏手にある小さな森を抜け、使用人達の家が点在する集落を通り過ぎる。
「お嬢様! また抜け出して来たんですか!?」
走るあたしに、洗濯物を干していた侍従長のモーラが声を掛けて来た。小じわの増えて来た目尻が驚きで目一杯ひろがっている。
その顔が妙に若々しいからモーラを驚かすのがあたしの密かな楽しみだったりする。昔は美人だったんだろうなあ。
「ううん。強行突破!
セバスチャンが庭で伸びてるから後で拾っといて!」
足を止めずにそれだけ伝えると、あたしはそのまま先を急ぐ。
お父様の次にお小言の長い彼女に捕まったらヤバい。
モーラの呆れた顔を想像して楽しい気分になりながらあたしは走る。木と土で作られた家々の間を抜けると小川が一本。それに架けられた橋を小刻みにきしませながら渡った先が、いつもあたし達が遊び場にしている森。
使用人の子供達と遊ぶことにお父様はあまり良い顔をしないけど、あたしはそんなこと気にしないわ。大人になってからも仲良くすれば良いだけの話じゃない? 何を心配しているのかしら。
踏み固められた森の小道を抜けると遊び場にしている広場に到着。そこには地面に絵を描いている女の子達と、先に遊び始めている男の子達の姿が見えた。
あの子達ったら!
昨日ちゃんと「あたしが来るまで待っといて」と言ったのに!
これはお仕置きが必要なようね。
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