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「はいタリオみっけ。広場に行ってなさい」
「くそぅ……今回は自信あったんだけどなぁ」
モーラの息子、タリオを発見。あたしの位置に合わせて大きな木の反対側を移動するという小賢しい手を使って来たけど、足元の草をガッサガッサいわせながらじゃ意味無いわね。
何で気付かないのかしら?
「あ、ライナはまだ見付かってない事になってるから突っ込んじゃダメよ?」
「……また? ライナに甘いんだから」
広場に行こうとするタリオに一応釘を刺す。甘くて結構。遊びは楽しむ物よ!
あたしが一睨みすると、チョップが恐いのかタリオは素直に広場へと消えて行った。
さて。あと一人見付けたらそろそろライナを見付けてあげようかしら……。
更に男の子を一人見付け、最後の一人を見付ける前にライナを捕獲しとこうかしら、と考えていた時だった。
「――か?」
「はい、――に――が」
声が聞こえる。
さっきの場所から少し離れたところだからタリオ達じゃないとは思う。
かくれんぼの最中におしゃべりするとは思えないし……。
第一、大人の男女の声だわ。
こんな所で何してるのかしら?
そして片方、女の声に聞き覚えがある気がした。
小さい頃に亡くなったお母様の代わりに、最近お父様と再婚した『新しいお母様』の声に思える。
そう考えたらもう我慢できない。もし確かめなかったら今夜悶々として眠れないわ!
夜更かしはお肌に悪いもの。これはなにがなんでも確認しなきゃ。
多分あたしの存在は気付かれてない。タリオの二の舞は避けなきゃね。後で思いっきり馬鹿にしてやる予定なんだから。
あたしは慎重に声が聞こえる方向へと向かう。
小枝を踏むなんて基本的なミスはもちろんしない。
一目。
一目見るだけで良いんだ。
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