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――見えた。
やっぱり。お義母様だわ。
相手はお義母様と向かい合ってるから顔が見えない。
あの格好……軽装だけど鎧ね。
この国の制式装備じゃないって事は別の国の人なのかしら。
話を聴いてみよう。何か嫌な予感がする。
「……この国も災難ですな。まさか将軍の妻が敵国のスパイだとは夢にも思いますまい」
「オホホホホ! 正に盲点と言った所かしら? こうして情報が筒抜けになり続ければ、我が国の勝利は確実ね!」
……なっ!?
何で今さらそんな話題を!?
そして密談中に高笑い!?
そもそもこんな大して深くもない森で密談するなんて何を考えているのかしら。
あの鎧だってそう。
良く見たら今戦争してる隣国の鎧じゃない。
あんなクソ怪しい格好でウロウロするなんてとてもじゃないけど正気だとは思えないわ。
……って違う。突っ込んでる場合じゃないわ。
お義母様……『女狐』という言葉が悪口に聞こえない顔をしてるなぁとは思っていたけれど。まさか本当に悪人だったなんて……。
「むっ! そこに居るのは誰!?」
あ、ヤバい。
お義母様と目が合っちゃった。
良く考えたらあたしの髪は腰まである茜色。緑に潜むには向いてなかったかも。
普通ならここは逃げる場面だ。だけどあたしは逃げない。真実を知った以上黙ってなんて居られるもんか。
あたしは草むらから立ち上がるとお義母様を指差して宣戦布告する。
「話は聞かせてもらったわ! お義母様達の悪企みも、あたしが知ったからにはここまでよっ!」
――決まった。
密談していた二人は悔しそうに歯噛みしている。
こういう時の為に鏡の前で練習しておいて良かったわ!
使う時が来るとは思ってなかったけど。
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