1人が本棚に入れています
本棚に追加
「今のは何? あたしに何をしたの!?」
あたしは今すごく不安そうな顔をしてるに違いない。お義母様が嬉しそうだもの。
顔を扇子で隠したその目元には余裕が伺える。あたしに掛けた魔法は、あまり体に良くない物だろう。下手したら命に関わるかも。
……いや、多分お義母様はあたしを殺そうとした。でもお父様譲りの魔法耐性が邪魔をして殺せなかったんだわ。
じゃあ何をしたの?
あたしを殺せなかった以上、何をやっても彼女の悪事はバレる。あの余裕の笑みは一体……?
目まぐるしく考えを巡らせるあたしを見て、お義母様は愉しげに高笑いを始める。
「オホホホホホッ! 私の邪魔をした罰に呪いを掛けて差し上げましてよ!」
の、呪い!? そんな前時代的な技術を扱える人がまだ居たのね!?
色んな意味で驚いているあたしを満足そうに見て、彼女はさらに解説へと入る。
やはり悪人は自分の悪事を自慢しなければ気が済まないらしいわ。
……調査する手間が省けて助かるけど。
「あなたに掛けた呪いは特殊な物でしてよ。その名も『深夜零時の逆転劇』、零時を迎える毎に性別が逆転する面白い呪いですの」
「単なる腹いせかよ! 何の解決にもなってねぇじゃねぇか!」
ああぁあ……悩んだあたしが馬鹿みたいだった。多分この人何も考えてないわ。
現に思わず叫んだあたしの言葉にきょとんとしてるもの。
「まぁ! ……女の子が何て言葉づかいでしょう」
そっちですかお義母様。
「その呪いを解きたければ私を追い掛けて来る事ね……その途中であなたの命を奪う事が私の狙い。完璧な計画ね! オーッホホホホホ!」
あたしは目を細め、呆れが伝わるよう声色を低くする。
「どちらにせよ今やってる計画が失敗に終わるのは避けられないわね……」
お義母様の動きが停止した。
と思ったらすぐに動き出す。
「オホホホホホ! 負け犬の遠吠えなんて耳に入らなくてよ!」
どうやら聞こえなかった事にしたみたいね。
彼女は乱れた髪もそのままに宙へと浮かび上がる。
――飛んで逃げるつもり!?
「ではさらばじゃ!」
そう言い残し、光り輝き消える。
御丁寧にランスとかいう男も連れて行ったみたい。
逃げられちゃった……。
……それにしてもなんでわざわざ飛んだのかしら?
最初のコメントを投稿しよう!