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   北の対には、廂の間に私の席  シツラ     ミ ス が設えてあり、御簾の内側から は小柄で可愛らしい女人の気配 が漂ってきました。 「上総殿、北までご足労様で す」  普段は私を『上総さん』と呼 んでいた勾当内侍様改め楓様が 私を『上総殿』と呼びました。 北の方様は直接お声をかけて下 さらず、楓様の取次で会話を進 めるおつもりの様です。 「お初にお目にかかります、北 の方様」  私の挨拶を受け、楓様は、 「先ずは何故私がここにいるの かご説明するように、とのこと でございます」 と、北の方様のお言葉としてお っしゃいました。 「私、楓は右大臣様の隠密でし た」  ! 「上総さんが主上の隠密をなさ っていたように」  !!  本日は、一体何回驚けば済む のでしょうか!? 「右大臣様と藤壺様が内裏を去 られたときに、主上に洗いざら い申し上げました。  主上は既に気付いておいでで した。  主上は私に、何も言わずに勾 当内侍を辞して、末姫様にお仕 えするように、と仰せられ、こ こにいる次第です」  
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