35人が本棚に入れています
本棚に追加
ダンジョウインノミヤ
弾正尹宮様から、お邸へのお
招きがございました。あの頃の
ジョウガンデン
ように夜に貞観殿裏に御車を差
し向けて下さるとのことです。
弾正尹宮邸に到着すると、懐
かしい方が女房装束でお出迎え
下さいました。
「静香様!」
「お久しゅうございます、上総
様」
静香様は、ようやく白拍子を
辞め、表向きは宮邸の女房とし
て弾正尹宮様との共住が実現し
ていたのでした。
私は嬉しさのあまり涙ぐみそ
うになりましたが、静香様に
「上総様に泣かれてしまっては
今宵の趣向が台無しになってし
まいます」
と笑みを含んだお顔で軽く睨ま
れ、笑い返して涙を止めまし
た。
「やはり何か趣向がございます
のですね?」
「ええ、上総様には驚きの連続
になられましょう」
「静香様にお会いできましたこ
とで十分な驚きですのに」
静香様のご案内で寝殿へ着き
ましたら、来客は私が最後で、
皆様お揃いになられていまし
た。
その顔ぶれは、本日二度目の
驚きでした。
最初のコメントを投稿しよう!