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そりゃまぁ、自分の命の方が大事だが……。
……なんだか釈然としないものを感じるが、とりあえず逃げることにしよう。
ここまで来たら、俺は邪魔にしかならないからな。
てけてけさんは、隅っこでふるえている。多分巨大蜘蛛は俺を襲ってくるから一緒には連れてけない、か。
――その時、巨大蜘蛛の筋肉がピクリと動くのを見た。
化け物女は、気付いていない。よほど感情的になっているからだろうか。
巨大蜘蛛が攻撃する足の軌道を予測するに、化け物女ごと俺を引き裂くつもりなのだろう。
その刹那、俺の体は勝手に動いた。
「肉、貴方、何をし……」
巨大蜘蛛が攻撃する瞬間。俺は化け物女を体当たりでその場に倒れさす。
廻る。世界が廻る。
違う。俺自身が廻っているのだ。
眼下に、胸から上を無くした俺の肉体が見えた。
そして、ボトリと俺は地面に落ちる。
「肉、貴方、どうして……」
「けっ……。体が、勝手に動いたんだよ……」
言い終わった瞬間、グシャリと何かが潰れる音がする。
そこで俺の意識は途絶えた。
頭が、潰れた。いや、潰された。
私が肉と呼称するそれの脳漿が地面にぶちまけられる。
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