死の螺旋

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 ふつふつと、心の中からどす黒い感情がこみ上げてくる。  それはなんだろうか。久しく忘れていた感情。少なくとも愉快なものではないのは確かだった。    私は音もなく爪を伸ばす。これがあの虫けらに通用しないのは分かっているはずなのに。  私はあの虫けらに対して許せないという想いが湧き上がった。それは何故か。分からない。    私は極めて冷静に、敵の攻撃を受け流す。  こいつ自体の速さや攻撃力は変わっていない。ただ、堅くなっただけだ。対処のしようはいくらでもある。    嗚呼、認めよう。理由は分からないが、私はこいつが許せない。  極めて残酷な死を。    私は何度も足や胴体を斬り裂こうとするも、その体に弾かれる。  その隙に足による攻撃。  極めてノロい一撃だが、体勢が崩れた私は避ける術がない。  私は左腕を盾にする。  無論左腕は斬り飛ばされるが、胴体まで斬り裂く事は出来なかったみたいだ。  鈍い痛みが体を襲うが、死ななきゃ安い。左腕で命を買えるなら安いものだ。    その時、ふと突破口を思い付いた。  そうだ、こいつは堅いといっても所詮それは外骨格だけ。
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