死の螺旋

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 予測通り、虫けらの胴体に刀を突き立てられた。  虫けらが悲鳴をあげる。私はそれに喜びを感じた。  もっと、苦しみの喘ぎ声を聞かせて、と。    もちろん、そのまま何もせずにいたら私が八つ裂きにされてしまう。  名残惜しいが、この悲鳴はもう諦めなくてはいけないようだ。    私は刀を引き抜く。少し大きめの刀を作ったので、そこに丁度手を入れられるぐらいの穴がぽっかりと空いている。  私は躊躇無く、その穴に手を突っ込んだ。  肉特有の柔らかさが手を包む。だが、その感触に浸っている暇などない。  片手だが、中ですかさず印を組む。   「カーン!!」    虫けらは断末魔をあげることなく中身を燃やし尽くされて、絶命した。  断末魔を聞けなかったのは、少々残念だった。       「ねぇ、片桐、死んじゃったの?」    全てが終わった後に、私が左腕を接合している途中、その下半身の無い出来損ないの幽霊は私に声をかけた。  右手は火傷を負ったものの、動かない事もない。もしかしたら私は水神の一種なのかもしれない。  左腕は、完全に接合するまで半日といったところか。   「多分ね。ま、供養してやらない事もないわ」
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