20人が本棚に入れています
本棚に追加
予測通り、虫けらの胴体に刀を突き立てられた。
虫けらが悲鳴をあげる。私はそれに喜びを感じた。
もっと、苦しみの喘ぎ声を聞かせて、と。
もちろん、そのまま何もせずにいたら私が八つ裂きにされてしまう。
名残惜しいが、この悲鳴はもう諦めなくてはいけないようだ。
私は刀を引き抜く。少し大きめの刀を作ったので、そこに丁度手を入れられるぐらいの穴がぽっかりと空いている。
私は躊躇無く、その穴に手を突っ込んだ。
肉特有の柔らかさが手を包む。だが、その感触に浸っている暇などない。
片手だが、中ですかさず印を組む。
「カーン!!」
虫けらは断末魔をあげることなく中身を燃やし尽くされて、絶命した。
断末魔を聞けなかったのは、少々残念だった。
「ねぇ、片桐、死んじゃったの?」
全てが終わった後に、私が左腕を接合している途中、その下半身の無い出来損ないの幽霊は私に声をかけた。
右手は火傷を負ったものの、動かない事もない。もしかしたら私は水神の一種なのかもしれない。
左腕は、完全に接合するまで半日といったところか。
「多分ね。ま、供養してやらない事もないわ」
最初のコメントを投稿しよう!