死の螺旋

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 それを聞いて、何が悲しいのかそれは泣き出してしまった。  いつも思うが、泣くというのは人間特有の仕草だと思う。    供養でもしてやろうか、と。私は肉の亡骸まで歩みよった。    そして、それを見て私はどういう感情を面に出していいのか分からなくなった。  嗚呼、素晴らしいわ、肉。貴方は最高の廃物利用。  私は顔を抱え、笑いを隠すことが出来なくなってしまった。   「呆れた。これでも死なないというの。本当にしぶといわ」    ヴラドが代表するヴァンパイアでさえ首を切り落とされれば絶命するというのに。  こいつは頭を砕かれてもなお、魂が肉体から抜け出していない。   「片桐、助かるの?」   「私が蘇生すれば九割九分助かるわ。本当、ゴキブリなんか目じゃないわね」    私でさえ首を切り落とされれば絶命するというのに。  私は右手の爪を伸ばす。まだ接合されていないが左手首を切る。  接合されきってないため、まだポタポタとしか血が流れ落ちない。  とりあえずそれを、潰されて判別しにくい口と思わしき部分に垂らす。
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