夏物語

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 妖怪てけてけ  発祥は北海道。なんでも電車の轢死体が元ネタなんだとか。上半身と下半身が切断されてしまったそうな。  転じて、下半身の無い幽霊をてけてけと呼ぶようになったとか。  ちなみにてけてけという名前の由来は、移動するときの音から。下半身が無いから肘を使って移動するそうな。  発祥の北海道ではシャカシャカと呼ぶらしい。    情報ソースは俺の友人でありオカルトマニアの朋樹。  真偽のほどは知らん。興味もない。    授業のチャイムが鳴る。多分これは予鈴だ。  どうやらのんびりしている暇は無いらしい。俺はてけてけさんの腕を無理やり引き離す。   「走るぞ、授業に遅れる」    てけてけさんの返事を待たずに俺は走り出した。       「テスト返すぞ。みんな、いくら点数悪くても悲観するなよ」    自分はかっこいいと思っている白のスーツ(死ぬほど似合わない。そして暑苦しい)。ほどよくはげ上がった立派な頭部。  化け学の教師であり、担任のさわちゃん先生だ。本名は忘れた。    みんなは口々に『やっべ自信ねぇよ』とか『ちゃんと勉強しとけばよかった』などなどのうろたえの声をあげていた。
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