夏物語

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 うちの学校は馬鹿でも点数がとれるように、秀才が点数を取りすぎないように調整している。だから必然的にみんな似たような点数となってしまうからだ。    俺は席に戻ると、てけてけさんにさりげなくテスト結果を見せる。  てけてけさんはそれを見て、意地悪そうにニヤニヤした。    へっへっへ、お代官様。こちらは黄金色の菓子にございます。    おお、苦しゅうない、苦しゅうない。ささ、近うよれ。    少なくとも、俺とてけてけさんのやり取りはそういった雰囲気をかもしたしていた。  水戸の中納言様が諸国漫遊する時代劇の見過ぎかもしれない。    ちなみに朋樹は机の上でつっぷしている。ひどい出来だったらしい。  反面、尚之は机の上に足組してすわりながらガッツポーズをしている。点数が良かったのだろう。    ……実は尚之はテストの点数だけは何故か良い。そして教師にも受けが良い。いわゆる要領の良い奴なのだ。  しかしそれが素か、と問われたら真ではなく、模範生を演じているだけらしいのだ。  俺は、彼が自然体のまま付き合ってくれるから、友人になりたいと思った。
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