夏物語

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 ……そうだ、化け物女は?  俺はキョロキョロと周りを見渡すが、どこにもいない。  確かに普段の学校生活では全く目立た、むしろ物凄い地味な彼女だが、それでも『目に映らない』はずはないのだ。    ……単純に来てないだけなのかな。学校に住んでるくせに。    テスト返しが終わったら今度は解答を確認する作業に移らなくてはいけないのだが、俺は至ってやる気なし。  俺はその時間ずっと暇つぶしにてけてけさんと筆談しているのだった。  普通にてけてけさんと話していたら、精神異常者と間違われてしまう。てけてけさんの姿も声も一般人には認識出来ないのだ。       「化け物女ー、いるかぁ?」    休み時間。  化け物女がクラスにいないというのも俺にはなんだか胸にもやもやした何かが残る。理由が分からないのだ。    彼女が心配というわけではない。あんな化け物、心配するようなタマじゃない。  ただ、なぁんか嫌な予感がしないでもないんだよなぁ。    俺は例の教室の扉を開け放つ。あの化け物女は大体ここにいることが多いからだからだ。
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