夏物語

9/32
前へ
/144ページ
次へ
 まぁ、クラスにいないのだから全く期待はしてなかったのだが、悪い意味で期待を裏切られる事になる。    一言で言うと、荒らされている。  机は砕かれ、椅子は散乱し、赤い塗料で塗りたくられたこの空間に、さらにその上に赤い塗料が新しく塗りたくられている。    赤い塗料……いや、その飛散した血液の量や教室の惨状を見るに、多分ここで戦闘に近しい行為が行われていた。それも上位捕食者同士の。  奴らは人間が相手なら、反応をさせる前に殺すことが可能なはずだからだ。    ……そこまで考えるのは、やはり考え過ぎなのだろうか。  しかしどちらにせよ、これは俺らにとって愉快な行動になるとは思えない。    休み時間はあと二分もないだろう。  ……胸にもやもやが残るなら、このまま化け物女探す方が良いか。どうせ次の時間は数学だし。  ただ、一つだけ懸念があるとするならば。……てけてけさんに言っちゃったんだよな。    休み時間はトイレに行くから、って。    明日から俺のあだ名はブリブリマンになるのだろうか。彼女に限ってそれはないと思いたい。        体育館裏も見た。部室棟も見た。裏庭も見た。    ただでさえ暑いのに、ずっと歩き回っているから余計に暑い。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加