夏物語

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 真夏だっつーのに歩き回らせんなよな。  自分が好きでやってることなのに、何故か化け物女に対して怒りがこみ上げてくる。  かなりお門違い    さて、この階段を登りきれば屋上だ。ここ以外は全部探した。女子トイレ以外。  ここにいなかったら、もう知らん。  授業に戻るのもかったるいし、冷房の効いた保健室で休ませてもらう。    扉を開けると、比較的生ぬるい風が校内に入る。嬉しくない。  どうやらこの蒸し暑さは風の心地よさすらも奪うようだ。許せん。    だらだらと流れる汗が、口の中に入る。少々塩辛い。  すでに汗を拭うほどの気力すらも奪われた。何故こんなにも夏は暑いのか。  北海道の人が羨ましいとすら思える。シベリア行きたい、アラスカ行きたい、南極行きたい。  すでに俺の思考回路はショートしていた。    しかし、居心地が良いと言えば良いか。  屋上には何か、居心地良いと思わせる何かがあるのだろうか。  だからこそ、この場から漂う血の臭いは目立つ。    まさか、また人死にではないだろうな。  真昼から食事を行う上位捕食者は少量とは言え、この前の蜘蛛野郎のようにそういう奴は存在しているのだ。
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