プロローグ

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 その日俺は彼女と出会った。  黒い月が照る夜、真っ赤に染め上げられる光景は、さながらダンスパーティーのようだった。  彼女はこちらを見やる。  その表情は極めて妖艶で、そしてこの世のモノとは思えないほど美しい。   『おいでなさい、肉人形。この世では味わえない、快楽に満ちた淫らな夜を見せてあげる』    俺はその時初めて気付いた。  黒い月だと思っていたそれは、彼女がかかげる人間の生首だということを。      ――かつてヒトであったそれは、最期にどのような光景を見たのだろうか。      
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