死の螺旋

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 気がつくと、俺は机の上に寝そべっていた。  どうやら快眠だったらしい。よだれの跡が、頬と机にびっしりとついている。  頬についたよだれの跡をこすりながら体を起こす。   「……あれ? 学校……?」    俺は周りを見渡した。紛れもなく俺の通う学校。  既に外は闇に侵食されていて、校内には誰もいないということが容易にうかがえた。  窓から見えるは真円を描く綺麗な満月。満月の光で何とか辺りを見る事が出来る。  ふと、黒板の上に鎮座している時計に目を移す。既に夜中の一時を過ぎていた。   「やべ……、母さんめっちゃ怒ってるだろうな……」    帰る準備をしなくては。  そう思い、荷物をまとめようとした。   「……あれ?」    無い。カバンも教科書もノートも何もかも。  机の中にも、机の脇についているフックにも何もかけて無い。  席を間違えて寝ていたのかと、他の席の机の中などを調べたが、やはり何も無い。  しょうがない、と俺はため息をつきながら教室を出ようとする。    ――カツンと、何かを蹴り飛ばした。  それはそのまま教室の戸に当たり、ガシャンと大きな音をたてる。静寂に包まれた空間にはそれが余計に際立った。
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