死の螺旋

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 何を蹴り飛ばしたのかと、俺は暗闇でほとんど何も見えない中、手探りにそれを拾う。  ……携帯だ。誰かの落とし物だろうか。プリクラやシールなどで装飾されている。多分このクラスの女子の所有物だろう。  いけないとは思いつつも、好奇心から画面を開いた。    画面には赤い塗料がこびりついている。それはまるで……血を連想させた。  待ち受け画面に映っている、多分所有者の笑顔が塗料とあいまって何か物悲しさを思い起こさせる。    ……正直気持ち悪い。とても気味が悪い。  画面に赤い塗料を塗りたくられた携帯に映る時間を見ると、やはり夜中の一時過ぎ。  いや、時間なんかよりも目をひいたものがある。    6月7日 日曜日    ……日曜日?  俺は部活というものにも入ってはいないし、追試などを行うほど頭が悪いわけでもない。  はっきり言って休日に学校に来る予定など、無い。  何故、俺はここにいるのか。  頭をフル回転させて、今日一日を思い起こす。  ……何も思い出せない。今日一日の事が何も。  なんだか本当に気味が悪い。別の世界に迷い込んでしまったようだ。      ――ナゼ、オレハココニイルノダロウ。    不安という名の心の闇が俺を浸食していく。
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