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……考えていても仕方がない。今日は帰ろう。自分の家に。
俺は教室の戸に手をかけた。
……真夜中の学校とは、何故こんなにも不気味なのだろうか。
暗闇の中、微妙に入り来る街の明かり。それが逆に闇を強調して恐怖心をあおりたてる。
廊下を歩くごとにカツーンカツーンと足音が響き渡る。それも不気味だった。
幽霊か、犯罪者か。後ろから少しずつ間をつめて、ギュッと真綿をしめるように俺の首を締め上げる。
俺は声もたてられなく、そのまま……
不気味な夜はこんな妄想すらもかきたてる。
……よそう。今は何も考えたくない。
ギィ、だのミシミシ、だのと机やら椅子やらが勝手に音をたてる。
夜中に自然に鳴るこの音は、どうして起こるのだろうか。
廊下まで響いて、それも不気味さを強調する。
ここまで夜が怖い、などと思ったのは今日が初めてだ。
カツーンカツーンカツーンカツーン
ギィ、ミシミシ
カツーンカツーンカツーンカツーン
俺は歩く。何も考えずに。
嫌な妄想などに頭が捕らわれないよう、思考を切り離して。
……だから、それに気がつくのには少々時間がかかった。
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