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「ひっ……」
俺はいきなり差し出された生首に驚き後ずさりした。
そのとき、何かにつまずいてしまったようだ。バランスを崩してその場に尻もちをついてしまう。
ベトリ、と嫌な感覚が襲った。
……地面が血にまみれている。
彼女はその一連の行動を見て、その顔は普通の笑顔から一転、口元をおおきく歪ませた不気味な笑みに切り替わった。
「――そう。貴方、捕食者じゃなくて贄なのね?」
贄ってなんなんだよ!? 生け贄とかの贄なのか!?
いや、そもそも食事ってなんだよ!?
声が出ない。多分、恐怖で。
理解出来ない。いや、理解したくない。だから怖い。
彼女はその口を大きくあける。まるで頭が全て口になってしまったのかのごとく。
……比喩じゃない。頭の、口に当たる部分から大きく上下に切り開かれているのだ。
こいつ、人間じゃない……!?
体が震えて動かない。
彼女は俺の頭をそのまま飲み込むかのように襲いかかった。
俺は瞼を閉じることすら出来ずに固まっていた。
「……違う。贄でもない」
彼女は俺から離れると、顔を元に戻して元の場所に居直る。
……何がなんだか、分からない。
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