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「あんた、まだ片付けてないの!?」
仕事から帰って来た母親が、あたしに向かって刺々しい口調で言い放った。
仕事帰りで機嫌が悪かったのもあるが、そもそも、この人の機嫌が良い日なんて見たことない。
「…ごめん。でも…あたし、今学校から帰って来たばっかりで……」
「早く洗濯物も取り込んでよね!…ほんっと、役に立たないガキねっ」
吐き捨てるように言って、自分の部屋に入る母親の香水臭い背中を、あたしは、
「………」
無言で見つめるだけだった。
ふぅ…と独り、溜まっていた洗い物に溜め息を吐く。
カチャカチャと皿洗いを再開しながら、窓から射し込む夕日に目を細める。
すると、水面に映った自分の顔がよく見えた。
どこまでも無表情な、自分の顔が。
「――…」
……大丈夫。
あたしがちゃんとしてれば、あの人も分かってくれる。
いつかきっと、仲良くしてくれる。
両親が仲良ければ、あたしは何も要らない。
それだけで、充分だ。
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