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「すいません! 私も遅刻しました!」
橘会長と、一日の唯一の楽しみである朝の会話をしていると、何処かで聴いたことのあるソプラノボイスが俺の後ろの校門から聴こえた。
まさか……いや、奴は俺より先に走り去った筈だ! ったく、何処のソプラノ少女だコンチキショウ! 俺の楽しみは邪魔させん!
世渡りの基本、空気を詠むという今一番必要なスキルを持ち合わせていないKYな少女に注意しようと振り向くと、膝に手を当て息を整えるツインテール。
……マジでか。
街角ドッカンドッカンパーラダーイスしたツインテールおんにゃのこが、右手を軽く上げ汗で前髪を額に貼り付け、橘会長に挨拶をしていた。
「む、君は倉木 恵(クラキ メグミ)じゃないか。学校生活だけでは無く、遅刻までし始めたのか?」
あら? 若干橘会長はご機嫌斜め。言葉の端々にトゲがある。
腕を組み、顔を若干しかめツインを見ている。眉もつり上がり穏やかな空気では無いな。
……渋い顔もまた美しい。いや、ちょっと待て。何故遅刻した? それと、何故ツインこと恵まで腕を組み橘会長を睨む。
「遅刻くらい何ですか! こっちは勉学より大切な用事で遅くなっただけです!」
「何だねその態度は。そもそも君達は…………あ、神羅君、君は教室に急ぎたまえ。私はこの子と話があるんだ」
……なん……だと?
これから天気の話でもして二分程のトークをしようと思っていたのに、ツインの乱入で橘会長直々に退場命令が出てしまった。
食い下がる訳にもいかず、俺は言い合いを始めた二人を残し、何の楽しみも無い教室というアウェイへと足取り重く進んでいった。
ツインテール
この怨み
はださでおくべきか。
どす黒い感情を胸に溜めながら、上履きに履き替え階段を上った。
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