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「お前らの目、宝石みたいで綺麗やなァ」
【Jewelry Eyes】
のんびりとした口調で、その言葉は紡がれた。眠たそうな瞳で、キンちゃんは力無く笑っている。けれどもその眼光は相変わらず衰えることは無い。二つの金の瞳は、窓から差し込む光で耀きを増しながら、僕らの瞳を見つめていた。
(……どっちの方が、宝石見たいなんだか)
普段でも十分宝石みたいなのに、太陽の光一つでここまで美しく磨かれたように輝いている。
――キンちゃんの方が、僕らの瞳なんかよりずっと綺麗だよ――
なんて、言いたい言葉はすぐに思いつくのに、口にするのはそれよりずっと難しかったりする。先輩に対しては簡単に言えるのに、今それが言えないのはちゃんとした理由があって。それに、この気持ちに気付いたのはごく最近のことだから。惹かれた理由なんて忘れてしまったけど。こんな気持ち、先輩以外に向けるなんて思っても居なかったから、自分でも信じがたい事実。勿論キンちゃんは僕の気持ちなど知るはずもないし、知られたくも無い。知ったからといって僕らの関係が進展するわけでもなし。だから出来るだけこの気持ちを悟られないように(ニブいキンちゃんは、結局気付かないかも知れないけど)、少し長い沈黙の後に先の問い掛けの返事を返した。
「……そう?」
いつものように返したつもりだったけど、やっぱりどこか変だったかもしれないな。こんなことを考えてるせいか、心拍数が異常に上がっている。顔が熱く感じられる。ああ、でも……心配は無さそうだ。キンちゃんはいつものように「そうや」って返してきた。にこにこと笑顔を浮かべながら、僕に向けて。感情を隠すことが苦手なタイプだから、僕の様子の変化にはきっと気付いてはないだろう。でも、いつもなら意外に早く僕の変化に気付いてくれる先輩の言葉が無い。少し心配になって視線をそちらに向けてみれば、何か居痛そうな顔で視線をキンちゃんに向けながら、口を半開きにしていた。
「お、俺は…」
……え?
もしかして、先輩も
キンちゃんに対する気持ちって
僕 と 同 じ な の ?
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