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ウルスの過去“鋼と黒毛”
ウルスは部屋の奥に大切に飾ってある父の形見の大剣、ドラゴンキラーを見つめていた。「もういいよな…」
集会場の中は相変わらず騒がしかった。「お!とうとう使うことにしたんだな?それ。」レイドがウルスの背中にあるドラゴンキラーを指指した。
「これからはコレで頑張ってみるよ!」 そのとき、ウルスの背中から、「あの……」
騒がしい集会場の声に混ざり小さな声が聞こえた。振り返るとそこにはメイド服を着た少女がいた。
「ヒオ!?」ウルスが驚いた。
「ディアナさんのオ手伝いをすることになりましタ…」
しばらく会わない内に上手に喋れるようになっていたヒオにウルスは安心した。
「ブキ、変えたんですね…」
ヒオがウルスの大剣を見て言った。「あぁ!もういいかなって思ったんだ!」
ウルスがそう言うとヒオが首を傾げた。「ナニが?」ヒオがウルスに言うとウルスがテーブルに座って言った。「少し…話をするよ。13年前…」
「ほら!行くぞウルス!」
ウルスの父、ガンツがウルスと共に雪山へ鉱石採取に向かった。当時、幼かったウルスはハンターである父に憧れを抱き簡単な手伝いをしていた。
「さて、そろそろ日が暮れるから帰ろう!」ガンツとウルスは下山する為、発掘した鉱石の入った袋を抱えて洞窟から出た。だが外は物凄い吹雪だった為しばらく洞窟入口で様子をみた。
その時だった!洞窟の外に巨大な二つの影が見えた! ガンツは目を凝らしてその影を見た。そして凍り付いた……。決して寒かったわけではない。そこには見たこともない鋼色の龍と二本の角を生やした黒毛の牙獣が互いに睨み合っていたのである!そして二匹は互いに相手めがけて突進した!お互い一歩も怯まず目の前の敵を倒すことに必死という感じが見て取れる。
「ギャオォォォン!」鋼龍が叫ぶと黒毛の牙獣めがけて風を思わせるブレスを吐いた!牙獣はブレスを食らったが怯む気配は全くない!むしろ闘心がわき出たことすら感じられた!「グゴォォォ!」今度は牙獣が口を開くと凄まじい光線を鋼龍めがけて吐き出した!二匹の戦いはしばらく続いた。鋼龍が鋭い爪で牙獣の身体を引き裂き、牙獣が鋼龍に殴り掛かり、鋼の身体を砕いた。二匹の激しい戦いをガンツとウルスは瞬き一つせずに隠れて見ていた。どの位経っただろうか。やがて傷付いた二匹は去った。
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