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ど、ど、どうしよう~っ。
明日はテストなのに、俺ってばすっかり忘れてたあ…っ!
泣きそうな表情で火原は廊下を走っていた。
こういう時の火原が助けを求める相手はいつも決まっている。
しかし探しても探しても今日はその人物が見当たらないのだ。
「あ、高崎、柚木知らない?」
クラスメイトの姿を見つけて尋ねてみる。
「柚木?柚木なら今日は用があるらしくて先に帰ったみたいだぞ」
「か、帰っちゃったの!?」
「ああ。正門の方でも親衛隊が集まってるのが見えたしな」
「そう……」
クラスメイトが去った後、火原は頭を抱えてその場にうずくまっていた。
どうしよう…どうしよう…
柚木以外で誰か頼れる人は…
「……火原先輩?」
「え…っ?」
聞き覚えのある声に火原は振り返る。
「何をしているんですか、こんな廊下のど真ん中で…」
「月森くん…」
火原はしばらく硬直したまま月森を見上げる。
「…………火原先輩?」
訝しげに月森が眉間にシワを寄せた。
「月森くんっっ!!!」
「うわ…っ!!」
勢い良く立ち上がり月森に向くと、その腕に火原はしがみつく。
「なっ、何ですか一体…っ」
「お願い月森くん!!!」
火原は子犬のような瞳を月森に投げかけ(本人は無自覚)。
「俺に勉強、教えてくださいっっ!!!」
「は……?」
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