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「…………」
時折ふわりと舞う春風。
小鳥達の囀り。
暖かい春風にサワサワと揺れる木々。
まるでアンサンブルのように、それは加地の耳に心地良く聴こえた。
屋上の壁に背を預けて、加地はゆっくりと瞼を閉じる。
授業に体育があったせいか、放課後になって眠気がほんのりとやって来る。
夢と現の境目で加地はウトウトしていた。
この何とも言えない中間の感覚が、加地は好きだった。
現実から心地良く意識が遠のいて行く感じ…。
そうしていつしか、加地は眠りの世界へとしばし旅立った。
「……地、おい加地」
「ん………?」
自分の名を呼ぶ聞き慣れた声に、加地はうっすらと意識を覚醒させる。
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