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私の国には、森の奥のさらに奥には小さく長閑な村があるという噂があった。
その村は私の住む国と向かいの国。その2つの国の狭間に位置し、どの国とも交易を行ってこなかったという。
2つの国は狭間に位置するその村を攻め、領土の拡大を幾度となく謀ろうとしてきた。
しかし、両国とも成果はなく、遣わした兵の姿を2度見ることは叶わなかったという。
村は森に囲まれていて、この森にも奇妙な話がつく…
ある人に聞けば、火柱が立つのを見たといい、ある人は雷が落ちたともいう。
私はそれらを生涯、見ることはできなかった。
さらに奇妙なのは、その森は2つ目の怪物の巣であり、兵達はその怪物の餌になったのだという話である。
子供じみた話であるにも関わらず、大の大人も恐れて疑わない1つの噂話であった。
そんな奇妙な森をいつからか人々はこう語り出した。
「森には神がいる。あの怪物は神の化身だ」と…。
春―
微風が草木をなで、花が芽吹く頃、私の住む国にとある旅人が立ち寄った。
齢は30~40歳くらいの男性で、その両脇には2人の子供を連れていた。
旅人は、国の中で森の小さな村の噂を国民から聞き歩いていた。
私も、その旅人と話した。その旅人は私のような子供の話でも真剣に聞いてくれた。
そして、旅人が来てから1週間ほど過ぎた頃、国から旅人たちの姿が突然消えた。
そしてあくる日に森へと向かう大きさの異なる3種類の足跡が残っているのを見つけた。
時は流れ、10数年たったある日、その旅人が戻ってきて、私に1冊の手記を手渡してくれた。次はその旅人が残した1冊の手記に付随する。
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