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「…………」
何時もの時間に目を覚ました遼は早朝の霞みをぼんやりと見ていた。
「…………眠いな」
しょぼしょぼする目を擦りながら危ない足どりでふらふらと風呂場に向かった。パジャマがわりに着ていた服を体から引っぺがし風呂場に入ると、まだ寝ている頭に冷水を浴びせる。
(今日は特にテストはなかったな…)
半強制的に覚醒させた頭で今日の予定を思い出しつつ、今度は熱いシャワーを浴びて体を温める。一瞬の内に湯気は充満し、遼の体を覆い尽くした。ある程度温まった所で、体などを洗ってシャワーを止めた。
(頭が…くらくらする)
制服に着替えながらぼんやりと考えては気のせいと思い、気を取り直した遼は部屋から鞄を取り、下の階で寝ている四人を起こしに向かった。
「あっ…遼、おはよう」
「おはよう、武。起きていたのか」
階段を降りたところには寝ぼけ眼の武が立っていた。いま起きたばかりなのか、いつもセットされている髪の毛が所々跳ねていた。武は口元に微笑を浮かべながら遼を見つめた。
「遼はいつも早いな」
「毎日同じ時間に起きているからな。体が慣れているんだろう」
「そうか、見習わなければ」
「その前に、顔を洗って頭を起こしてこい。寝ぼけているだろ」
「ああ…」
武の素直な返答に遼は呆れていた。端から見れば朝の会話だが、普段笑わない武が微笑を浮かべているのは彼が寝ぼけながら会話をしていたからなのだ。
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