遼、風邪を引く

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「荒は俺が起こすから」 「ああ」  寝ぼけているとは到底思えないしっかりした足どりで武が洗面所に向かうと、遼は荒の部屋のドアを開けた。 「…………」  部屋の端に置かれているベットには丸まった布団の塊があった。微かに上下する塊からは白い髪の毛が少し覗いていた。遼はその塊に近づくと揺さぶりながら声をかけた。 「荒、朝だ。起きてくれ」 「…………(反応無し)」 「起きろ、荒」 「……ん」 「お・き・ろ」 「んんっ…」  荒は軽く身じろぐが、大きな体をさらに丸めただけで起きる気配がなかった。遼は少し考え掛け布団を掴むと力の限り引っ張った。 『ドサッ』 「…………いたい」  遼の思惑通り、布団ごと落ちた荒は体を打った衝撃で目を覚ました。 「さっさと起きてくれ。そして、馬鹿二人を起こして来てくれ」 「………がんばる」  半眼の状態の荒が返事すると、遼は一回荒の頭を撫でて部屋を出た。後ろから荒がついて来ている気配を感じながら階段との境に来た。 「目を覚ましてから来いよ」 「……うん」  多少、反応が速くなった荒はゆらゆらと洗面所に向かった。
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