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「くそが…」
呟きの聞こえた方を見ると、男が携帯を取り出していた。
「おい、お前の名前は『時守遼』か?」
「そうだ、としたら?」
「覚えておくぞ、ぜってえ忘れねえ…」
「鼻血を出しながら言っても、説得力に欠けるな」
「なにを「遼、ここにいた!」
『グシャッ』
朱髪の男子が飛んで来て、叫ぼうとしていた男の頭を踏み付けた。遼は飛んで来た男子、昴を呆れた目で見つめた。
「遅いぞ、もう終わっている」
「え~!
もう、一人で行くなって言っているのに、何で行っちゃうんだよ」
「見回りは各自ばらけているからな。見つけたら直ぐに行動しなければ後の祭りになる」
「だからってよ…」
拗ねて文句を言う昴に遼はため息をついた。
「とりあえず、そこから足を退けてやれ」
「あっ、なんか踏んでた?」
変だと思ったと言いつつ昴が足を退けると、遼は男の髪を掴んで頭を上げた。
「…………」
「確実に白目を向いているな」
「そんなことより、遼は何でそんな格好しているんだ?」
「不気味な顔をするな」
「ねえ、なんで?」
昴の顔は笑みを浮かべているが、目だけが笑っていなかった。それを見て遼は顎で奥を示した。
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