遼ファンクラブの原点

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「もう、大丈夫だ」 「……」  頭上から聞こえた声に女の子は恐る恐る顔を上げた。そこにはさっきとは打って変わって柔らかい表情の遼が見ていた。  遼は目線を合わせて恐がらせない様に話しかけた。 「殴られただけか、他に怪我はない?」 「あの…」  頬に手をあて怪我の具合を診る遼に女の子は顔を赤らめた。 「ああ、失礼した。あまり酷いようだと傷が残るから。この感じだと残らないから大丈夫だな」  遼が頭を軽く撫でると、安心したのか女の子は微笑んだ。 「ありがとうございます。あの、名前はなんと?」 「ああ、俺は時守遼だ。何かあったら尋ねてくればいい」  ポーと遼の顔を見たまま動かない彼女に、遼は手をさしのべた。 「家まで送ろう。歩けるか?」 「はい、歩け…」  立ち上がろうとして動きが止まった女の子に遼は首を傾げた。 「…腰が抜けたか?」 「…(赤面)」 「(しょうがない)上げるよ」 「へっ?」 『ヒョイ』  遼は返事を待たずに女の子を抱き上げた。それも普通ではなく、お姫様抱っこをしたのだ。流石にそこまでされて、あの四人が黙っているはずもなく…。 「遼、俺が抱っこするから」 「そうだよ。遼は喧嘩で疲れているだろうし、雷に任せた方がいい」 「でもなぁ…」  雷と昴の思わぬ行動に、遼はちらりと女の子を見ると顔を赤くしてぼんやりとしていた。
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