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昼休みの激動が嘘のように、午後の授業は何事もなく終わって行った。アクセルは荷物を片付け、帰路についた。
夕暮れ時の空は、やわらかな茜色に表情を変えていた。
街へと続く草原地帯は虫の音だけが響き渡っている。アクセルは他の生徒と時間をずらして帰っているので、彼の他には誰もいない。その時、虫は虫でものお腹の虫がくぅとないた。
「くそっ……カイゼルのせいで昼飯食べ損ねたじゃないか……腹へったな」
アクセルは目の前にあった石を蹴飛ばした。コロコロと転がる石を見て軽くため息をつく。
「街で買い出しして帰るか……」
彼はそうつぶやくと石を蹴飛ばしながらとぼとぼと歩いていった。
しばらく歩くとエリシオの街についた。商業都市なだけあり、夕暮れ時を少し過ぎた時刻であっても、多くの人で賑わっている。
「人混みは嫌いだな」
そうは言ってもこの商店街でなければ買い物はできない。アクセルは人混みをかき分けるように、商店街に入って行った。
沢山の店が並ぶ商店街は人で溢れ、進むのもひと苦労だ。飲食店も点在していて、いい匂いがあちこちから漂ってくる。
「オレのいまの手持ちじゃ、これが限界か」
そう行ってアクセルはパンと牛乳を買い、他の店に目もくれずに商店街を後にした。
「ふぅ……やっと人混みがなくなったな」
アクセルは商店街から少し離れた路地の階段に腰を下ろした。
「腹減ったし、ここで食べるか」
アクセルは先ほど買ったパンを頬張り、牛乳を流し込んだ。昼から食べていなかったせいか、それなりの大きさのパンを無言で食べ進め瞬く間に完食。その後、牛乳を一気に飲み干した。
「全く……これが晩飯かよ」
あっけなく終わった夕食に不満そうな顔を浮かべた。
「そろそろなんか仕事しなきゃな……」
アクセルは路地の奥を見つめた。その時、彼の目に何かが写った。
「あれは……」
アクセルの視線で一瞬きらめく黒髪が踊り、路地へと消えて行った。
「……ルナ?こんな所でなにを……?」
ほんの好奇心だった。アクセルはルナと思われる人物の後を追うように、路地のさらに奥へと足を踏み入れて行った。
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