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眩い陽の光が差し込む美しい森。木々の隙間から漏れ出る光が、優しく森に息づくものたちを包み込んでいた。
その森の先の高台に立つ、木造の小さな家。そこに向かって歩いていく少年。
その時、突如として森から火の手があがる。
「なんだよ、これ!?」
少年は自分の背後で起きた事態に困惑していた。そして、自らの向かう先を見た時、飛び込んできた光景に目を疑った。
「家が……」
少年は家に向かって全力で走った。しかしどれだけ走ってもたどり着けない。少年の耳には彼の家族のものであろう悲鳴だけが届いていた。
「父さん!! 母さん!! ……!!」
少年がやっと家……家があったはずの場所にたどり着いた時、すでに辺りは焼け焦げた黒の世界へと変わっていた。
家の跡には、家族の遺体がぽつりと転がっている。
「そんな……うわぁああ……
あああっ!?」
少年は布団をはねのけ飛び起きた。辺りを見渡すと見慣れた室内が目に映った。
「はぁ……はぁ……」
大量の汗をかいていたようだ。手で額を拭って、洗面台へと向かった。蛇口をひねり水をだすと、おもむろに顔に水をかけた。冷たい水が少年の火照った体を冷やす。
「またこの夢……」
少年は近くの出窓を開けた。夜の冷えた空気が、部屋を吹き抜ける。窓の外では、東の空がうっすらと明るくなってきていた。
「もう朝か……」
少年はぼそりとつぶやいて、部屋を出て行った。
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