第一章 驚愕

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「……離してくれる?」 ルナはアクセルの目を睨むように見つめた。その冷たい視線は、アクセルを貫かんとするかのように、ぶれる事なく一点を見つめていた。 「離しなさい」 ルナの口調が変わった。アクセルはその迫力に、手を離すしかなかった。ルナは乱れた胸元を直すと、再びアクセルを睨んだ。 「武術をやらないと言うのならそれもいいわ。ただ覚えておくことね。奴らは貴方を消しにくる。これは確実なの。武術ができないなんて関係ない。ためらいなく貴方を殺すでしょうね。死にたいのなら、このままなにもしなければいい。少しでも生きる意志があるなら、武術でもなんでもやって強くなる事ね」 ルナは踵を返し、部屋を立ち去ろうとした。 「おい!! 待てよ!!」 アクセルはルナの腕を掴んで、彼女を止めた。 「何?」 ルナを掴むアクセルの腕は、小刻みに震えていた。掴む手に力が入り、ルナは顔を歪めた。 「……納得行くかよ!! いきなり、命狙われます、だから武術をしましょう。やらなきゃ死にます? ふざけんな!! お前のせいでオレの人生滅茶苦茶にされてたまるかよ!!」 「それは貴方が勝手に……」 「大体何でお前が狙われてるか、その理由も教えねぇで、巻き込まれるオレには知る権利があるんじゃねぇのか!? あいつらは何者なんだ!? お前は一体何なんだよ!!」 アクセルはまくし立てるように、言葉を吐き出した。ルナもアクセルの余りの勢いに、少し驚いているようだった。 「はぁっ……はぁっ……」 「……そうね、少し身勝手過ぎたかも知れない。 でも私の事については何も喋れない。これは重要な秘密なの。貴方を巻き込んだ事は謝るわ、ごめんなさい」 「あ……あぁ」 アクセルはルナの態度の変化に驚きを隠せないでいた。 「貴方に一人護衛をつけます」 「はぁ?」 「私の部下を護衛としてつけるのです。彼が敵から護ってくれるでしょう」 ルナはそう言うと、アクセルの手からするりと抜け出した。 「私は行くわ。でも、もう一度よく考えて。貴方の道を」 ルナは扉から出て行った。 「おい!! まだ話は……」 アクセルが扉から出ると、そこにはもう彼女は居なかった。 「くそっ!!」 静かな廊下に、壁を叩く音が小さく響いていた。
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