第一章 驚愕

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アクセルは苛立つ気持ちを抑えて部屋に戻った。さっきまでいた部屋は、改めて見るとベッドと蝋燭しかない殺風景な部屋だった。 「あいつが出てったって事は、あいつの家じゃないんだよな」 アクセルはもう一度辺りを見渡した。石造りの壁、床。飾り気のないこの部屋には冷ややかな空気が流れ、女の子が住んでいる部屋ではないと言うのがわかる。 「……ここに用はないし……出るか」 アクセルはベッドの側に落ちていた自分の鞄を拾い上げ、部屋を後にした。 「さて、出口は……あれか?」 アクセルは蝋燭の灯りの先に、階段のようなものを見つけた。 「さっきあんなのあったか?」 疑問に思いつつも階段の前まで進む。下から覗きこむと、階段を上った先に扉があるのが見て取れた。その扉の隙間から僅かに光が差し込んでいる。 「ここだな」 アクセルは階段を登り、扉を開いた。眩しい光が飛び込んで来て、一瞬目が眩む。 「っつ……朝になってたのか」 辺りを見渡すと、細い路地が入り組んでいる。人気のない路地裏に出たようだった。 「こんなところの地下に部屋が……!?」 アクセルは目を疑った。先ほど自分が出てきたはずの扉がなくなっていたのだ。あるのは路地の壁だけ。 「どーなってんだ? あいつも突然消えるし……まるで魔法だ」 アクセルは理解の範囲を越える出来事に、頭を悩ませた。周りには扉らしいものもなく、完全に消えてしまったらしい。 「……わけがわからん……とりあえず帰ろう。もう疲れた」 アクセルは路地裏を出た。どうやら場所はエリシオの中だったようだ。ほっと息をつくと、アクセルは帰路へついた。 「ルナ様」 エリシオに建ち並ぶ、美しい建造物の上から、ルナはアクセルの様子をうかがっていた。 「どうしたのベル?」 ルナの後ろにはひとりの男が立っていた。黒髪に黒服、全身を黒で包んだ男は、ルナをじっと見つめている。 「彼を……行かせて良かったのですか」 「どう言う意味?」 「我々には多くの力が必要…彼の力は重要かと」 「そうね。 でもそれには彼自身の意志が必要……いまは待ちましょ。 彼の護衛、頼んだわよ」 「御意のままに」 男はルナの前から姿を消した。 「アクセル……」 ルナは、もうアクセルの姿の見えなくなった路地を見つめていた。
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