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アクセルは苛立つ気持ちを抑えて部屋に戻った。さっきまでいた部屋は、改めて見るとベッドと蝋燭しかない殺風景な部屋だった。
「あいつが出てったって事は、あいつの家じゃないんだよな」
アクセルはもう一度辺りを見渡した。石造りの壁、床。飾り気のないこの部屋には冷ややかな空気が流れ、女の子が住んでいる部屋ではないと言うのがわかる。
「……ここに用はないし……出るか」
アクセルはベッドの側に落ちていた自分の鞄を拾い上げ、部屋を後にした。
「さて、出口は……あれか?」
アクセルは蝋燭の灯りの先に、階段のようなものを見つけた。
「さっきあんなのあったか?」
疑問に思いつつも階段の前まで進む。下から覗きこむと、階段を上った先に扉があるのが見て取れた。その扉の隙間から僅かに光が差し込んでいる。
「ここだな」
アクセルは階段を登り、扉を開いた。眩しい光が飛び込んで来て、一瞬目が眩む。
「っつ……朝になってたのか」
辺りを見渡すと、細い路地が入り組んでいる。人気のない路地裏に出たようだった。
「こんなところの地下に部屋が……!?」
アクセルは目を疑った。先ほど自分が出てきたはずの扉がなくなっていたのだ。あるのは路地の壁だけ。
「どーなってんだ? あいつも突然消えるし……まるで魔法だ」
アクセルは理解の範囲を越える出来事に、頭を悩ませた。周りには扉らしいものもなく、完全に消えてしまったらしい。
「……わけがわからん……とりあえず帰ろう。もう疲れた」
アクセルは路地裏を出た。どうやら場所はエリシオの中だったようだ。ほっと息をつくと、アクセルは帰路へついた。
「ルナ様」
エリシオに建ち並ぶ、美しい建造物の上から、ルナはアクセルの様子をうかがっていた。
「どうしたのベル?」
ルナの後ろにはひとりの男が立っていた。黒髪に黒服、全身を黒で包んだ男は、ルナをじっと見つめている。
「彼を……行かせて良かったのですか」
「どう言う意味?」
「我々には多くの力が必要…彼の力は重要かと」
「そうね。 でもそれには彼自身の意志が必要……いまは待ちましょ。 彼の護衛、頼んだわよ」
「御意のままに」
男はルナの前から姿を消した。
「アクセル……」
ルナは、もうアクセルの姿の見えなくなった路地を見つめていた。
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