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あの激動の夜から数日、いまだにアクセルを狙うような者は現れず、彼は普通の毎日を送っていた。しかし、その傍らでは彼の護衛を任されたベルが常に目を光らせていた。
「なぁ……あんたいつまでオレの護衛なんかしてるつもりだ?」
エリシオンからの帰り道、自分の後ろを歩くベルに向かってアクセルは振り返った。
「ルナ様がよいと仰るまで、私は貴方の身を守ります」
「ここ数日、誰もオレを殺しになんて来ちゃいない。もう大丈夫なんじゃないのか?」
「いえ、奴らは必ず貴方を始末しようとするはずです」
「だったらなんですぐ来ないんだ? 武術のできないオレなんてすぐに殺せるだろ?」
「いえ。奴らは貴方は相当な使い手だと考えています」
「なんだと?」
「貴方が追い払った刺客、黒豹のタクスは裏社会では名の通った殺し屋です。それと互角の戦いを演じた訳ですから、向こうもそう簡単に手をだして来ないのでしょう」
ベルの言葉はアクセルを妙に納得させた。そもそも敵はアクセルの戦える姿しか見ていない。武術の経験が無いなどと言う情報を知る由もないのだ。
「じゃあ、相手はかなりできる奴を送り込んでくるんじゃないのか? あんた、そいつらと戦って勝てるのか?」
「私もそれなりの実力はあると自負しています。しかし、それでも及ばないような刺客が現れた場合、命をかけてあなたをお守りするのでご安心を」
「命って……やめてくれ、オレはあんたにそこまでしてもらう義理はない。何だってあんたがオレをそこまでして守る?」
「それは……ルナ様があなたの力を必要としているからです」
ベルは一瞬口を詰まらすも、アクセルを見つめて言葉を放った。
「……力?」
「おや、優等生のアクセル君じゃありませんか」
突然数人の男に声をかけられた。ベルがすかさず臨戦態勢に入る。が、アクセルがそれを制止した。
「エリシオンの学生だ。刺客じゃない……まぁ味方でもないけどな」
「そちらの方は?最近キミの周りをうろついてるようだけど」
「お前には関係ない」
「ふふふ……冷たい物言いですね」
「大体、馴れ馴れしく話しかけて来てるけど、お前誰だ?」
アクセルの言葉に男達は沈黙。気まずい空気がその場を包んだ。
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