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まだ陽が登りきらないような早朝。すこしずつ顔を出した太陽の光が、優しく街を照らしている。
まだ朝早いにも関わらず、商品の陳列や荷運びに勤しむ商人たちや、遠方の学校へと向かう学生たち、多くの人々が街を行き交っている。
ケルン王国の中でも有数の商業都市エリシオ。この街は人々の活気に溢れていた。
先程の少年もこの街に住む学生の一人のようだ。制服に身をつつみ街中をとぼとぼと歩いていた。多くの学生が友人と登校しているのだが、彼はそれを横目に一人黙々と歩を進めていた。
「お~いアクセル!!」
少年の後ろから声がする。少年はアクセルという単語にぴくりと反応したが、止まることなく進んでいく。
「こら!! 逃げんなよ!!」
声の主が後ろから駆け寄り、少年の肩を叩いた。アクセルと言うのはこの少年の事のようだ。
「……カイゼル」
アクセルは振り返り、声の主の顔を睨みつけた。
「なんだよ? 何怒ってんの?」
「別に。ただ朝からお前の顔を見なきゃ行けないのが嫌なだけだよ」
アクセルは睨み顔から一転、笑顔でカイゼルに喋りかけ、踵を返し進んでいった。
「やれやれ……キツい性格してるねぇ」
カイゼルは呆れ顔でアクセルの後を追いかけた。
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