序章 出会い

7/17

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
アクセルのいる学棟とカイゼルのいる武棟は1本の長い渡り廊下で繋がっている。アクセルはその渡り廊下を通って、武棟へ向かおうとしていた。 すると前方に、人だかりが出来ていた。人がどんどん集まってきて、次第に大きくなっていく。アクセルの横を抜け、人だかりに紛れて行く生徒の声が耳に届いた。 「あれが噂の転校生!?」 「めちゃくちゃ可愛いじゃねーか!!」 「たまんねー!!」 飛びかう男子達の黄色い声……いや下品な歓声。よく見ると人だかりはほとんど男子で構成されていた。 (カイゼルの行ってた転校生か……女子だったんだな) アクセルは人をかき分け、混雑を抜け出した。 (まったく、いい迷惑だ) アクセルはそう言いながらも、渡り廊下から見える広場にちらりと目を向けた。見やすい位置からはずいぶんと離れていたが、それでも男子達が騒ぐ理由ははっきりとわかった。 (まぁ、確かに可愛いよな) アクセルはしっかりと転校生を見た。表情はしっかり見える距離ではないが、美しく長い黒髪が太陽の光を集めて、他のどんな髪よりも輝いて見えた。 その美しさに一瞬息を呑む。 その時、丁度1時を告げる鐘の音が響き渡った。 「はっ!! 弁当の事忘れてた!!」 鐘の音で我に返ったアクセルは、渡り廊下を駆け抜けて武棟へと足を踏み入れた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加