2人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
アクセルのいる学棟とカイゼルのいる武棟は1本の長い渡り廊下で繋がっている。アクセルはその渡り廊下を通って、武棟へ向かおうとしていた。
すると前方に、人だかりが出来ていた。人がどんどん集まってきて、次第に大きくなっていく。アクセルの横を抜け、人だかりに紛れて行く生徒の声が耳に届いた。
「あれが噂の転校生!?」
「めちゃくちゃ可愛いじゃねーか!!」
「たまんねー!!」
飛びかう男子達の黄色い声……いや下品な歓声。よく見ると人だかりはほとんど男子で構成されていた。
(カイゼルの行ってた転校生か……女子だったんだな)
アクセルは人をかき分け、混雑を抜け出した。
(まったく、いい迷惑だ)
アクセルはそう言いながらも、渡り廊下から見える広場にちらりと目を向けた。見やすい位置からはずいぶんと離れていたが、それでも男子達が騒ぐ理由ははっきりとわかった。
(まぁ、確かに可愛いよな)
アクセルはしっかりと転校生を見た。表情はしっかり見える距離ではないが、美しく長い黒髪が太陽の光を集めて、他のどんな髪よりも輝いて見えた。
その美しさに一瞬息を呑む。
その時、丁度1時を告げる鐘の音が響き渡った。
「はっ!! 弁当の事忘れてた!!」
鐘の音で我に返ったアクセルは、渡り廊下を駆け抜けて武棟へと足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!