序章 出会い

9/17

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「いい加減にしろ!!」 アクセルはカイゼルの手を振り払った。 「なんなんだよ、いきなり走り出しやがって!! どこに連れてく気だ!?」 カイゼルに引っ張られたまま、1階の中庭まで連れてこられていた。 「いや~悪い悪い、おっと姫がおいでなさったぜ」 カイゼルが視線をアクセルから移す。その見つめる先には、あの転校生がひとりでベンチに座っていた。 アクセルが先ほど渡り廊下で見た時とは、距離が違う。アクセルは一瞬呼吸するのも忘れるような感覚に教われた。 遠くからでも美しさを見てとれた黒髪は、近くで見ると一層艶やかで、陽の光をまとって、まるで宝石をちりばめたかのように輝いている。 そしてその黒髪とは対照的な、透き通るような白肌。整った、いや整いすぎとも言うべきな非の打ち所のない顔立ち。黒髪の輝きとあいまって放たれる気品は、一般人が出せるそれとは別次元だった。 アクセルは彼女から視線を逸らせずにいた。ところがその視界にカイゼルが飛び込んできた。 「なっ!?」 カイゼルは転校生の前に立ち、気さくに声をかけていた。 「キミ転校生の子だよね?」 「はい、そうですよ」 「やっぱり、こんなかわいい子、この学園にはいなかったからさ。オレはカイゼル。武棟に通ってる。キミの名前を聞いてもいいかな?」 カイゼルは爽やかな笑みを転校生に向けた。 (そーいやあいつ、ナンパも得意だったっけ……) アクセルは二人のやりとりをじっと見つめていた。 「私ですか?私はルナ。貴方と同じ武棟に通います。よろしくお願いします」 ルナはカイゼルに微笑みを向けた。 「へぇー武棟か。ルナみたいにかわいい子は気をつけた方がいいぜ。武棟の男どもは、基本オレみたいに紳士じゃないからさ」 (よく言うぜ……エリシオン1の遊び人のくせして) アクセルは心の中でカイゼルに突っ込んだ。 カイゼルはルナに手を差し出した。 「転校したてで色々不安だろ?なんかあったらいつでも相談に乗るぜ?」 ルナは微笑んでカイゼルの手を取った。 「ありがとう。頼よりにしてます」 「おう。…………」 (なんだろうあの子、顔は笑ってるのに、雰囲気が笑ってない……) アクセルは二人の間に違和感を感じつつも、授業開始10分前の鐘がなったのでその場を後にし、教室へ向かった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加