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「いい加減にしろ!!」
アクセルはカイゼルの手を振り払った。
「なんなんだよ、いきなり走り出しやがって!! どこに連れてく気だ!?」
カイゼルに引っ張られたまま、1階の中庭まで連れてこられていた。
「いや~悪い悪い、おっと姫がおいでなさったぜ」
カイゼルが視線をアクセルから移す。その見つめる先には、あの転校生がひとりでベンチに座っていた。
アクセルが先ほど渡り廊下で見た時とは、距離が違う。アクセルは一瞬呼吸するのも忘れるような感覚に教われた。
遠くからでも美しさを見てとれた黒髪は、近くで見ると一層艶やかで、陽の光をまとって、まるで宝石をちりばめたかのように輝いている。
そしてその黒髪とは対照的な、透き通るような白肌。整った、いや整いすぎとも言うべきな非の打ち所のない顔立ち。黒髪の輝きとあいまって放たれる気品は、一般人が出せるそれとは別次元だった。
アクセルは彼女から視線を逸らせずにいた。ところがその視界にカイゼルが飛び込んできた。
「なっ!?」
カイゼルは転校生の前に立ち、気さくに声をかけていた。
「キミ転校生の子だよね?」
「はい、そうですよ」
「やっぱり、こんなかわいい子、この学園にはいなかったからさ。オレはカイゼル。武棟に通ってる。キミの名前を聞いてもいいかな?」
カイゼルは爽やかな笑みを転校生に向けた。
(そーいやあいつ、ナンパも得意だったっけ……)
アクセルは二人のやりとりをじっと見つめていた。
「私ですか?私はルナ。貴方と同じ武棟に通います。よろしくお願いします」
ルナはカイゼルに微笑みを向けた。
「へぇー武棟か。ルナみたいにかわいい子は気をつけた方がいいぜ。武棟の男どもは、基本オレみたいに紳士じゃないからさ」
(よく言うぜ……エリシオン1の遊び人のくせして)
アクセルは心の中でカイゼルに突っ込んだ。
カイゼルはルナに手を差し出した。
「転校したてで色々不安だろ?なんかあったらいつでも相談に乗るぜ?」
ルナは微笑んでカイゼルの手を取った。
「ありがとう。頼よりにしてます」
「おう。…………」
(なんだろうあの子、顔は笑ってるのに、雰囲気が笑ってない……)
アクセルは二人の間に違和感を感じつつも、授業開始10分前の鐘がなったのでその場を後にし、教室へ向かった。
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