咲キ乱レシ華――初メテノ想イト共ニ――

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「・・・お前は、言っても聞かないだろうから、お前が来る前にここで隠れていたんだ。はじめは、独り言を言うオマエしか見えなかったんだが、暫くして、小夜子の姿が見えた。吃驚したよ。見えた瞬間、オマエが襲われてるんだもんな。俺は、どちらにしろ、あの桜を処分して、小夜子の被害を最低限に食い止めるつもりだったから、小夜子に隙が生じた隙に持っていた火炎瓶を桜の木に投げつけた。・・・因みに、事前に父親である雄二郎氏の許可はとってある。あんな不気味な桜、とっとと燃やしてくれ、だそうだ。  諦めろ、景。彼女を葬るにはこうするしかなかったんだ。」  忍は、夏目にそう言い聞かせた。  「――っ・・・・・・」  忍の言葉に、夏目はその場に泣き崩れた。その肩をそっと支える忍。  涙が溢れる瞳で、夏目が桜を見れば、さくらの姿は消え、その代わりに、桜の木からあがる煙が、空高く昇っていて。    「・・・きっと、彼女の魂も、あの煙とともに天に召されたんだな。」  夏目はそう呟いた。  「…そうだな、・・・たくさんの仲間たちとともに。」  忍も、夏目を励ますように、空を見上げ、言った。
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